い草はスポンジのようなハニカム構造で抗菌作用あり、だから機能的!
北九州市立大学環境生命工学科 森田 洋 先生のレポートより引用・要約し、い草の様々な機能についてご紹介します。
著書:「抗菌・抗ウイルス性能の材料への付与、加工技術と評価」第3章 第19節 い草の抗菌効果とその応用、「驚くべきイグサの機能性 : 食べても健康、敷いても健康」「イグサのすべて」など
主な研究課題
1) イグサ・畳の機能性と新規用途開発に関する研究
畳表の原材料、イグサの生理的機能性の解明→新規用途を研究。
イグサは古来より薬草として利用されており、機能性食品・抗菌剤等の開発や畳表の新しい機能性を探る。
い草とは
い草は、原産地インド、Juncus(ジュンカス属)に分類される多年草の宿根性草本で、朝鮮半島から日本に伝わったといわれています。
Juncusはラテン語で「結ぶ」という意味があり、硬くて弾力性に富んでいます。
日本全土に自生し、畳の原材料として約 1,100年以上前より用いられています。
また、茎中の芯が油をよく吸い上げることから行灯の灯心としても用いられ、燈心草(トウシンソウ)とも呼ばれます。
スポンジ構造が有害物質を吸着
国産い草の茎断面図を電子顕微鏡( SEM)により観察したものです。
髄(ずい)部に白色多孔の弾力性に富む星状細胞からなる海綿組織が多数存在しています。
このスポンジのようにふんわりした中心構造が畳に弾力性をもたらします。
また二酸化窒素やシックハウスの原因となるホルムアルデヒドなど、有害物質の吸着に優れています。
例えばコップにタバコの煙を入れ、片方のコップにはイグサを入れ、もう片方には入れずにしばらく置くと、
イグサを入れたコップのタバコ臭は殆どなくなります。
更にイグサを粉末にして,烏龍茶や焼酎に入れると、不純物質を取り除き飲みやすくなるという報告もあります。
私たちの環境には様々な有害物質がありますが、い草の畳はこれらの物質を取り除いてくれる素晴らしい効果を期待できます。
い草の抗菌作用
い草は、大腸菌 O157、O26、O111、サルモネラ菌,黄色ブドウ球菌などの食中毒細菌、
バチルス菌、ミクロコッカス菌などの腐敗細菌、
水虫の原因になる白癬菌(トリコフィトン菌、ミクロスポルム菌)、
肺炎の原因となるレジオネラ菌に対して抗菌作用が見られます。
い草の大腸菌に対する抗菌作用
寒天培養地にO157(食中毒細菌)を混ぜたところにい草を置き、30℃で一昼夜培養 → い草の周囲は細菌が繁殖していない
い草の白癬菌に対する抗菌作用
左:い草を加えないもの、右:い草を5%加えたもの(5日培養)
左:い草を加えないもの、右:い草を5%加えたもの(5日培養)
足のニオイの元となるアンモニアを吸着し、微生物群の増殖を防ぐ
足の臭いの原因は下記の2つといわれています。
① 汗腺・皮脂腺から発生するアンモニア
② 足に付着している微生物群の増殖で発生する腐敗臭
①に対しては、い草のスポンジ構造により吸着作用があります。
②に対しては、足から取り出した微生物に 2%のい草の抽出液を加えたところ,微生物群の増殖を抑える作用がありました。
い草の足臭微生物群に対する抗菌作用
左はイグサ 2%培養地
右はイグサ無添加(右の白い部分が微生物)
年次経過した畳のハニカム構造
こちらは年次経過した畳表のイグサの断面図です。
見た目が色あせるだけでなく、スポンジ構造に変化が見られます。
い草内部のスポンジ構造が、弾力性、吸音性、吸放出性、有害ガス・有害物質吸着性などの機能性に大きな影響を与えるため、
畳の表替えは品質管理・生活の質を保つ意味でも重要といえるでしょう。